ビジネスに欠かせないパソコンや高機能なデスク、スマートフォン。買い替えたときに、「15万円だったから、今月の『消耗品費』で全額落としちゃおう!」と、購入した月に一発で全額を経費にしていませんか?
実は、ここにも税法の大きな罠があります。
10万円を超えるものを買ったときは、金額によって「その月に全額経費にできるか、それとも何年かに分けて経費にするか」のルールが細かく決められているのです。
今回は、知っておかないと損をする、あるいは税務調査で修正を求められる「10万・20万・30万円の壁」について解説します。
原則:10万円以上のものは「一発で経費」にできない
税法では、「1個(または1セット)あたり10万円以上で、1年以上使えるもの」を買った場合、それは買った時の経費ではなく、会社の「資産」として扱わなければならないというルールがあります。
資産になったものは、国が定めたルール(法定耐用年数)に従って、何年かに分けて少しずつ経費にしていきます。これを「減価償却(げんかしょうきゃく)」と呼びます。
例えば、パソコンの耐用年数は原則「4年」です。15万円のパソコンを普通に買った場合、15万円を一発で経費にするのではなく、4年(48ヶ月)にわたって毎月少しずつ経費(減価償却費)にしていくのが原則なのです。
明暗を分ける「金額の壁」まとめ
「じゃあ、15万円のパソコンはすぐ経費にできないの?」と思いますよね。実は、青色申告をしている個人事業主や中小企業には、非常に有利な「特例」が用意されています。
金額ごとの扱いをわかりやすく表にまとめました。
| 購入金額(1個あたり) | 税法上の扱い | 経費にする方法 |
| 10万円 未満 | 消耗品費 | 買った事業年度に一発で全額経費にできる。 |
| 10万円 〜 20万円 未満 | 一括償却資産 | 特例により、3年間で均等に(毎年3分の1ずつ)経費にできる。 |
| 10万円 〜 30万円 未満 (※青色申告の特例) | 少額減価償却資産 | 特例により、買った事業年度に一発で全額経費にできる!(年間合計300万円まで) |
| 30万円 以上 | 通常の減価償却資産 | 一発経費は不可。その物のルール(パソコンなら4年など)に従って何年分にも分けて経費にする。 |
💡 15万円のパソコンはどうなる?
上の表の通り、青色申告をしている事業者であれば、「少額減価償却資産の特例」を使うことで、15万円のパソコンでも買った期に一発で全額経費にすることができます!
ただし、これは「確定申告書に特例を使う旨の明細書を添付すること」などの条件があるため、ただ帳簿に「消耗品費」と書くだけでは不十分な場合があるので注意が必要です。
⚠️ 実務でよくある2つの大失敗
① 「1セット」の罠(ディスプレイと本体)
「本体が9万円、ディスプレイが3万円。どっちも10万円未満だから消耗品費で一発経費!」…これはNGになる可能性が高いです。
税法では「それ単体で機能するかどうか」で判定します。パソコン本体とディスプレイは「2つ合わさって1つのパソコン」として機能するため、合計した12万円で判定しなければなりません。
② 「消費税」を含むか含まないかの罠
10万円や30万円の判定を「税込」で行うか「税抜」で行うかは、あなたの事業所の経理方式によって変わります。
- 税抜経理をしている場合:9万8,000円(税抜) = 10万円未満(消耗品OK)
- 税込経理(または免税事業者)の場合:10万7,800円(税込) = 10万円以上(資産計上)※免税事業者の方は、店頭の値札が9万円台でも、税込で10万円を超えたら「10万円以上のルール」が適用されるので特に注意が必要です。
まとめ:高額な買い物をした年は、確定申告前に必ず確認を!
10万円以上の買い物をしたときは、ただ領収書を保管するだけでなく、「どうやって経費化するか」の手続き次第で、その年の税金が大きく変わります。
「今年、20万円前後の機材をたくさん買ったけれど、どう処理するのが一番節税になる?」「特例を使うための確定申告書の書き方がわからない…」
そんなときは、ぜひ当事務所にご相談ください。せっかく使える国の特例を使い損ねて損をしないよう、正しい会計処理をサポートいたします。

