個人事業主としてビジネスが軌道に乗ってくると、奥様や旦那様、あるいは親御さんや成人されたお子さんに仕事を手伝ってもらう機会が増えてくるかと思います。
その際、非常に多くの方がやってしまいがちなのが、こちらのケースです。
「今月は忙しくて妻に経理や発送業務をかなり手伝ってもらったから、パート代として10万円を支払って経費(人件費)にしよう!」
実はこれ、事前に税務署へ「ある書類」を出していないと、1円も経費として認められません。
今回は、身内に支払うお給料を、合法的にしっかり経費にするための厳格なルール「青色事業専従者給与」について解説します。
大原則:家族への給料は「原則、経費にできない」
日本の税法では、「生計を一にする(お財布が同じ)家族や親族に支払う給料は、原則として経費にしてはならない」という非常に厳しい大原則があります。
なぜなら、これを自由に認めてしまうと、「利益が出そうだから、とりあえず配偶者にたくさんお給料を払ったことにして、利益(税金)を減らそう」という、不当な税金逃れが簡単にできてしまうからです。
しかし、本当に毎日一生懸命手伝ってくれている家族の労働に対して、1円も経費にできないのは不公平ですよね。そこで、「青色申告」をしている事業者に限り、特別な例外ルールが用意されています。
家族の給料を経費にするための「4つの絶対条件」
家族への給料(専従者給与)を経費にするためには、次の4つの条件をすべてクリアしている必要があります。
① 【超重要】事前に税務署へ「届出書」を出していること
これが一番のハードルです。 「青色事業専従者給与に関する届出書」という書類を、あらかじめ税務署に提出していなければなりません。 提出期限は原則として、「経費にしようとする年の3月15日まで」(その年の1月16日以降に新しく開業した、または新しく家族が手伝い始めた場合は、その日から2ヶ月以内)となっています。
⚠️ 注意! 年末の確定申告の時期になってから「今年手伝ってもらった分を給料にしたい」と思っても、春先までに届け出を出していなければ、その年はもう手遅れ(経費にできない)となります。
② 給料をもらう家族が「専従(専ら従事)」していること
その名の通り、年間を通じて「その仕事につきっきりで手伝っている(原則6ヶ月以上)」必要があります。 そのため、以下のようなケースは「専従」とは認められない可能性が高いです。
- 他社でフルタイムの正社員として働いている家族
- 昼間は普通の学校に通っている学生の子供 (※ただし、夜間学生や、仕事の合間にできる軽微な手伝いではなく、本当に夜間や休日に本業並みの稼働をしている場合など、実態によっては認められる例外もありますが、基本は厳しいと覚えておいてください)
③ 15歳以上であること
その年の12月31日時点で、年齢が15歳以上(中学生は除く)である必要があります。
④ 支払う金額が「常識的な範囲内(妥当な金額)」であること
届け出を出せばいくらでも払っていいわけではありません。「仕事内容」「働いた時間」「同じ地域の一般的なパートの時給相場」などと比較して、仕事に見合った妥当な金額である必要があります。 週に数時間の事務作業しかしていない配偶者に、月50万円の給料を払うといったケースは、税務調査で間違いなく否認(経費取り消し)されます。
まとめ:「身内だからこそ」手続きは厳格に!
家族への給料は、節税効果が非常に大きい反面、税務署からも最も厳しくチェックされるポイントの一つです。
- 身内への給料は、事前の届け出がないと1円も経費にならない。
- 「3月15日」(または事由発生から2ヶ月以内)という提出期限を絶対に守る。
- 他で働いている家族や、学生の子供は原則として対象外。
「うちの家族の働き方なら、専従者給与にできる?」 「届出書に書く『仕事の内容』や『給与の金額』はどう決めればいい?」
など、家族への給与支払いを検討されている方は、提出期限が過ぎてしまう前に、ぜひお早めに当事務所までご相談ください。適切な手続きと、税務調査に強い帳簿作りをしっかりサポートいたします!

