マイホームの買い換えの特例について
買換え特例とは、マイホーム買換え時に発生する所得税の支払いを先延ばしにできる特例です。特定のマイホーム(居住用財産)を、令和7年12月31日までに売って、代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます(譲渡益が非課税となるわけではありません)。(措置法36の2)
不動産を売却すると、売却額から経費を差し引いた額=譲渡益に応じて譲渡所得税を納めなければならず、その額は数百万円にもなります。ただでさえ出費が多いマイホーム買換え時には大きな負担です。この特例を利用することでマイホームの買換え時に譲渡所得税を納税する必要がなくなり、マイホーム買換え時の負担を減らすことができます。
要件
売却する家の条件
- 自分が住んでいる家屋である。
- 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する。
- 家屋を取り壊した場合は、上の3年を経過する日の属する年の12月31日までの条件に加え1年以内に譲渡契約を結ぶこと。なおかつ契約終結までに貸駐車場などその他の用に供していないこと。
- 他の特例制度を受けていない。
- 売却物件が日本国内にある。
- 売却代金が1億円以下である。
- 居住期間が10年以上である。
- 親子や夫婦など、特別な関係がある人に対して売却していない(生計を共にしている親族や内縁関係のある人なども含まれる)。
買換える家の条件
- 建物の床面積が50㎡以上、土地が500㎡以下である。
- マイホームを売った年の前年から翌年までの3年間の間でマイホームを買換える。
- 日本国内にある。
- 取得日の25年以内に建築されたもので、新耐震基準を満たすものである。
メリット・デメリット
メリット
- 買換え時の資金面での負担を減らせる。
- 買い換えた家を売却しない限り、譲渡所得税を納めなくていい。
デメリット
- 非課税になったり減税されるわけではない。
- 次の買換え時には買換え特例は使えない。
- 他の制度と併用できない(3,000万円の特別控除、軽減税率の特例、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例、住宅ローン控除)。
計算例
例えば、1,000万円で購入したマイホームを令和6年に5,000万円で売却し、7,000万円のマイホームに買い換えた場合には、通常の場合、令和6年分は譲渡益4,000万円(5,000万円-1,000万円)が課税対象となりますが、特例の適用を受けた場合、令和6年分で譲渡益への課税は行われず、買い換えたマイホームを将来8,000万円で売却した場合、その年に、売却価額8,000万円と購入価額7,000万円との差額である1,000万円の譲渡益に、特例の適用を受けて課税が繰り延べられていた4,000万円の譲渡益(課税繰延べ益)を加えた5,000万円が、譲渡益として課税されるということです。
逆に、売った金額より買い換えた金額が少ないときは、その差額を収入金額として譲渡所得の金額の計算を行います。例えば、1,000万円で購入したマイホームを令和6年に5,000万円で売却し、3,000万円のマイホームに買い換えた場合には、通常の場合、令和6年分は譲渡益4,000万円(5,000万円-1,000万円)が課税対象となりますが、特例の適用を受けた場合、収入金額2,000万円(5,000万円-3,000万円)、取得費400万円(1,000万円×2,000万円/5,000万円)の1,600万円が、譲渡益として課税されます。
買い換えたマイホームを将来4,000万円で売却した場合は、売却価額4,000万円と購入価額3,000万円との差額である1,000万円の譲渡益に、特例の適用を受けて課税が繰り延べられていた2,400万円の譲渡益(課税繰延べ益)を加えた3,400万円が、譲渡益として課税されます。
税理士よりひとこと
- 譲渡益が3,000万円以上の人で今後売却する予定がない人には、この特例の適用を検討すべきですが、なかなか該当者は少ないのではないでしょうか。
- マイホームを売った時に、損失が出る場合は「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措置法41の5)」「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措置法41の5の2)」があります。