マイホームを売却しても住宅ローンが返済できずに残っている場合

 マイホームを売る際には、当然ながら損失が出る場合もありますが、給与所得などの利益と相殺できないのが分離課税の原則的なルールです。しかし、売却をした際に住宅ローンを完済できなかったり、新しいマイホームを住宅ローンで購入した場合には、特例として、その年の他の所得の利益と相殺したり、残った損失を翌年以降に繰り越して利益と相殺する制度が設けられています。

特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

 「マイホームを売却しても住宅ローンが返済できずに残っている場合、赤字分を給料所得や他の所得から差し引きできますよ。それでも赤字の場合は、翌年以降に繰り越しして、他の所得から引けますよ。」という制度です。(措置法 41 条の5の2)

損益通算できる損失額

 損益通算できる損失額は、「①住宅を売った際の損失分」か「②住宅ローン残高から売却金を差し引いた金額」のうち、どちらか小さい金額が適用されます。

(ケース1)

 5,000万のマイホームを4,500万の住宅ローンで購入し、3,000万で売却。売却時での住宅ローン残高は4,000万円だとします。

 5,000万円のマイホームを3,000万で売却しているため、2,000万円の損失①がでています。住宅ローンの残高4,000万円から売却金の3,000万円を引くと1,000万円の損失②です。損益通算できる金額は①と②のどちらか小さい金額が適用されるため、②の1,000万円が、通算損益の対象となります。

(ケース2)

 6,000万のマイホームを7,000万の住宅ローンで購入し、4,000万で売却。売却時での住宅ローン残高は6,500万円だとします。

 6,000万円のマイホームを4,000万で売却しているため、2,000万円の損失①がでています。住宅ローンの残高6,500万円から売却金の4,000万円を引くと2,500万円の損失②です。損益通算できる金額は①と②のどちらか小さい金額が適用されるため、①の2,000万円が、通算損益の対象となります。

(ケース3)

 6,000万のマイホームを3,000万の住宅ローンで購入し、4,000万で売却。売却時での住宅ローン残高は1,500万円だとします。

 6,000万円のマイホームを4,000万で売却しているため、2,000万円の損失①がでています。住宅ローンの残高1,500万円から売却金の4,000万円を引くと2,500万円の黒字になります。マイホームの売却金で住宅ローンを上回るため、特例は適用できません。

要件

  • 自分が住んでいるマイホームであること、または住まなくなった日から3年目の12月31日までに売ること。
  • 建物の所有期間が譲渡年の1月1日時点で5年以上であること
  • マイホームを売る契約凍結日の前日に住宅ローン(当初償還期間が10年以上)が残っていること
  • 売却額が、住宅ローン残高を下回っていること。
  • 売却先が家族などの特別な関係でないこと
  • 売却した年の前年、前々年に他の特例を利用していないこと
  • 所得金額が3,000万円超の場合、その年のみ適用できない。

必要書類

  • 売却したマイホーム(家屋及び敷地)の登記事項証明書
  • 売却したマイホームに係る住宅借入金等の残高証明書
  • 戸籍の附票の写しなど(譲渡契約締結日の前日において、住民票に記載されていた住所と売却した居住用財産の所在地とが異なる場合のみ)

詳細は次のチェックシートをご覧ください。

  • 特例を受けるには、マイホームを売却した翌年の確定申告期間に確定申告をすることが必要です。
  • 初年度に他の所得と相殺できない場合は、翌年以降3年以内で繰越控除を受けられますので、その際には2年目以降も、損失申告用の確定申告書を提出する必要があります。
  • 住宅ローン控除との併用適用は可能です。