消費税のインボイス制度について

申告の必要な方  

 事業をされている方や不動産を貸している方で、次に該当する場合は、消費税の確定申告をする必要があります。

  • 2年前の課税期間(個人の場合は1/1から2/31)の課税売上が1,000万円を超えた方
    •  なお、不動産を貸している方は、土地や居住用住宅は非課税なので、舗装等を施した駐車場や店舗用住宅の賃料収入が課税売上となります。
  • 2年前の課税期間の課税売上が1,000万円以下でも、課税事業者の選択届出書またはインボイスの登録申請書を提出された方
  • 2年以内に開業して、課税事業者の選択届出書またはインボイスの登録申請書を提出された方

 つまり、令和7年分の消費税の申告が必要な方は、基本的に3つのパターンになります。

 上記に該当せず、令和7年分の消費税の申告が必要でない方は、当然、消費税の確定申告はしなくていいことになります。所得税の申告の際には、売上については消費税込みで計算し、経費についても消費税込みで計算することになります(税込処理の場合)。

 また、令和7年の売上では消費税をもらっていないと主張されても、3つのパターンに該当する方は、売上の中に消費税が含まれるとして申告しなければなりません。

消費税の申告の方法

申告の方法として一般課税と簡易課税があります。

 一般課税とは、売上に係る消費税から仕入や経費に係る消費税を引いた分を計算して納税するというものです。売上や仕入れ・経費の中には、消費税のかからないものがあるので、細かく計算する必要があります。

 簡易課税とは、仕入や経費に係る消費税を計算するのを止めて、業種ごとに売上に係る消費税に決まった率を掛けて納税するというものです。例えば卸売業なら売上に係る消費税の10%を、飲食業なら消費税の40%を納めることになります。

 一般課税と簡易課税のどちらを選ぶかは、仕入・経費がどのくらいかかるかによります。簡易課税の「みなし仕入れ率」よりも仕入・経費が多ければ、一般課税が有利ですし、仕入・経費が少なければ簡易課税が有利です。経費の中にも、例えば給料賃金や租税公課、減価償却費、損害保険料などは消費税の対象外なので、個々に検討する必要があります。詳細は税理士にお尋ねください。

インボイスとは

 インボイスとは、取引先に対して請求書や領収書に正確な適用税率や消費税額等を記載して伝えることによって、申告の際に消費税を正確に計算し納めていただくための制度です。

 このため、請求書や領収書には、必ずインボイスの登録番号、適用税率、消費税額を記載しなければなりません。

 インボイス登録するかどうかは売上金額や業種業態によって判断する必要があります。

 免税事業者の場合、消費税の申告は必要ないのですが、取引先からインボイス登録を要請されたら、登録して消費税の申告をする必要があります。また、一般客を相手にする現金商売(飲食、理美容、雑貨など)の方は、必ず登録する必要はないですし、バー・スナックなどは相手が交際費に入れることも多いので登録した方がいいかもしれません。いったん登録すると免税事業者であっても、2年間は消費税の申告が必要です。

 課税事業者の場合、インボイス登録してもしなくても消費税の申告は必要です。いったん登録すると免税事業者になっても、2年間は消費税の申告が必要です。

インボイスの特例

インボイスの登録をされた方は、次の特例があります。

 免税事業者がインボイスの登録をして課税事業者となった場合、売上に係る消費税の2割だけ納付すればいいというものです。もちろん一般課税の方で、仕入経費に係る消費税が売上の8割以上か、卸売業の方はこの特例を使う必要はありません。

 2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間となります。

 仕入先や経費支払先がインボイス登録をしていない場合、本来は仕入税額控除できませんが、一定の期間その一部を支払った消費税として認めてあげますよ、というものです。

  • 令和5年10月1日から令和8年9月30日まで・・仕入税額相当額の 80%
  • 令和8年10月1日から令和11年9月30日まで・・仕入税額相当額の 50%

 逆に考えると、インボイス登録していない業者(仕入先や経費支払先)に消費税を払ったとしても、80%(50%)しか消費税を認めてくれず、令和12年からは全く認めないということになります。このため、消費税を払っている業者から、インボイス登録していない業者に対して、消費税抜きで支払うか、インボイス登録している業者に変更する可能性もでてくると思います。

 消費税の免税事業者は、消費税をもらっているにもかかわらず申告をしなくていいのはおかしい、ということで、請求書や領収書に登録された番号を付けることによって取引をガラス張りにしようと、このインボイス制度を導入したのだと思います。登録された業者だけが消費税を認めて、それ以外は消費税は認めない、そうすればやがて全ての業者が登録して、免税事業者がなくなり、消費税も確実に国庫に入るようになるかもしれません。

 また、取引がガラス張りになることによって、架空仕入や経費の過大計上も難しくなることから、所得税や法人税の適正申告も図られ、国としても一石二鳥だと思います。

 いずれにしても、インボイスが導入されたことにより、日頃の帳簿の記帳や請求書、領収書発行にも随分手間がかかり、消費税の申告が複雑になってきました。帳簿の記帳のしかたや消費税の申告について、ご不明点がありましたら、税理士までお問い合わせください。