相続人がいないと財産はどうなるか
亡くなった方が遺言書を残していれば、指定された人に財産を相続させることができますが、戸籍謄本を調査した限り、親族がいない場合、相続人不存在となります。また、相続人全員が相続放棄をして、結果として相続する者がいなくなった場合も、相続人不存在となります。
このような場合、残った財産はどうなるのでしょうか。
そのまま放置
相続人がいない場合、相続財産を放置すると、次のような問題が発生する可能性があります。法定相続人でない親族の方であれば、そのまま放置せず、家庭裁判所に申し立てをしていただくことで、財産を相続できるのです。
- 財産の管理人がいないので、自宅が空き家として放置される。
- 近隣の方に被害を与えて損害賠償トラブルに発展する恐れがある。
- 預金が凍結されたままになる。
なお、固定資産税については、土地や建物の使用者がいる場合、使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、固定資産税を課すことになります。
家庭裁判所に申し立て
内縁の妻、相続人ではない親族、看護師、借金の債権者などの利害関係人や検察官が家庭裁判所に「相続財産清算人の選任の申立書」を提出することによって、相続財産を分与してもらうことができます。
手続きの流れは、次のとおりです。
- 利害関係人または検察官が家庭裁判所に「相続財産管理人」選任の申し立てをする。
- 家庭裁判所は「相続財産管理人」を選任し、官報に公告する。
- 債権者、受遺者(遺言で財産を受け取る人)に対して請求申出ができる旨の公告をする。
- 相続財産管理人または検察官によって相続人を探している旨の公告をする。
- 家庭裁判所によって相続人を探している旨の公告をする。
- 相続人がいないことを確定する。
- 特別縁故者(内縁の妻、同居親族、看護師など)からの相続財産分与の申し立てを受け付ける。
- 特別縁故者の申し立てに基づいて家庭裁判所によって相続財産を分与される。
- 残った財産が国のものとなる。相続財産のうち不動産や株券については所轄の財務局へ、金銭債権、現金その他の財産は、家庭裁判所に引き継ぐことになる。
ここで⑦の特別縁故者からの相続財産分与の申し立ては、⑤の公告の期間(6か月)満了後、3か月以内となっており、期限を過ぎるとすべて国のものとなりますので注意が必要です。手続き完了までは、13カ月もの期間がかかります。
税理士からひとこと
相続税ですが、特別縁故者が相続した場合は、財産が基礎控除額の3000万円を超えると申告が必要です。特別縁故者は法定相続人ではないので、1人600万円の控除はできません。また、相続税も2割増しとなります。国が没収した場合は、当然ですが申告の必要はありません。
遺産分割協議がまとまらない場合、「このまま放置すると、やがて国のものになる」と言う方がいますが、それは間違いです。法定相続人がいる限り、その財産は相続人のものです。ただ、協議が延びると、法定相続人が亡くなったり、代襲相続が発生するなど、相続人が増加するので、更に協議が困難になります。